メランコリア(Melancholia)

メランコリア』(Melancholia)
というラース・フォン・トリアー監督の2011年の作品を観た。

この作品は第64回カンヌ国際映画祭においてキルスティン・ダンストが女優賞を受賞した。
トリアーの作品は過去に「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と「奇跡の海」の2作品しか観たことがなくて、今回の「メランコリア」は自分にとって初めて映画館で観たトリアーの作品になった。
個人的にラース・フォン・トリアー監督が好きで、「エターナル・サンシャイン」を観た時からキルスティン・ダンストも好きで、この2人が映画を作ってさらにカンヌで受賞するなんて「これはもう観るしかない」と思っていた。第64回カンヌ国際映画祭が終わってから結構待ったけどやっと映画館で観れました。

監督 ラース・フォン・トリアー
出演 キルスティン・ダンストシャルロット・ゲンスブールキーファー・サザーランドアレクサンダー・スカルスガルドステラン・スカルスガルドシャーロット・ランプリングジョン・ハートウド・キア、etc...
脚本 ラース・フォン・トリアー
製作 ミタ・ルイーズ・フォルデイガー、ルイーズ・ヴェス
撮影 マヌエル・アルベルト・クラロ
製作国 デンマーク
公開年 2011年
配給 ブロードメディア・スタジオ


自身の結婚パーティーのためにジャスティン(キルスティン・ダンスト)とマイケル(アレクサンダー・スカルスガルド)は会場である姉夫婦の家に向かっていたがリムジンに乗っていたため細い道を通れずに歩いて先を進むことになる。そしてパーティーには大幅に遅れ2人が到着したことでようやくパーティーの本番は始まる。
姉のクレア(シャルロット・ゲンスブール)と義兄のジョン(キーファー・サザーランド)が主催する盛大なパーティーには姉妹の母ギャビー(シャーロット・ランプリング)や元夫で2人の父であるデクスター(ジョン・ハート)、さらにジャスティンの会社の上司であるジャック(ステラン・スカルスガルド)の姿も。
しかしデクスターのスピーチ中に気分を害したギャビーは元夫を批判し、さらには姉妹にも苦言を呈する。
そして精神的に問題があるジャスティンをクレアは気にかけると同時に注意するために「バカなマネはするな」と釘を刺す。
心配する姉に対しジャスティンは「問題ない」と振り払うのだが、夜が更けていくと同時に精神的に不安定になり、奇妙な行動を繰り返す。やがて人々はジャスティンの元を去り、最後にはマイケルもいなくなってしまう....

クレアは憔悴した妹のジャスティンを療養のため家に迎えるが、そんな中、地球に惑星メランコリアが接近していることを知る。
そんなクレアの心配をよそに夫のジョンと息子のレオ(キャメロン・シュプール)は惑星の観測を心待ちに、そしてジャスティンはまるでメランコリアと共鳴しているかのような行動をとる。
不安が払拭されないクレアをジョンは「心配ない」と断言して落ち着かせ、4人は惑星メランコリアが地球を通過する夜を迎えるのであった.....


この作品は映像がとても綺麗で、音楽が凄く良い。
っていうと陳腐な感想に過ぎないですね。
ただの終末的な映画ではないですよね。シャルロット・ゲンスブールの演技は自然だったし、キルスティン・ダンストメランコリアと共鳴して、馬たちはおかしくなり、男たち(夫と息子)は惑星の接近に胸を躍らせ衝突すると知った時、大人は絶望し子供はなす術をなくす。色々な面から終わりに近づいていることがわかってとても良かった。この映画を観て怖いと感じる人はいると思いますが、自分としては「綺麗」だと思いました。
精神的に不安定なジャスティンから愛する人は離れ、1人では何もできなくなった妹をクレアは世話をする。しかし人々が恐怖に落ちる時、ジャスティンは冷静で、最後はみんなを包み込む。そんなラストシーンが好きです。
ただ地球が邪悪だから消えても良いと思っているわけじゃないと思います。共鳴し高揚することによって危機的状況の中に冷静さを持ち、みんなを包むような対処をしたんじゃないのかなって感じました。

最初トリアーはジャスティン役をペネロペ・クルスに依頼していたみたいで、それが決まらなくてキルスティン・ダンストになったみたいなんですが、キルスティン・ダンストが演じることになって非常に良かったと思います。鬱病になっていたしそれを克服してジャスティンという精神に問題がある役柄を見事に演じきれたというか。
鬱により精神的に追いつめられ最悪を考えてしまうが、惑星が衝突すると知り、共鳴し力を取り戻すような感覚。
それにしてもパーティーのシーンは微妙な雰囲気が流れつつも幸せそうだったな。奇跡の海もそうだったけどトリアーは暗い展開を描くのが得意なだけではなく、幸せな瞬間を描くのも得意だなって感じた。

映画には直接関係ないことを書くと、キーファー・サザーランドのことを初めて映画で観ましたが、父親のドナルド・サザーランドにそっくりですね。若い時というより少し年老いたくらいの時代が。
あとはジャスティンの家族構成が凄い豪華で、母親がシャーロット・ランプリング(イギリス)で、姉がシャルロット・ゲンスブール(フランス)って3人とも国籍が違うっていう家族。
他にはウド・キアもさりげない芝居も良かったし、ステラン・スカルスガルドが観れたのも良かったです。(パイレーツ・オブ・カリビアンでビル・ターナーを演じてたということは今日知った。)

メランコリアについてラース・フォン・トリアー監督はこう語ったみたいです。
「私にとって、この映画は世界の終わりを描いた映画ではなく、その時の精神状態に焦点を当てたものです。地球が今破壊されようとしているけれども、動揺する必要など何もない―。人類の全てが死んでしまうわけですから。」